改正が予定されているものの中で特に重要な論点としては基礎控除及び税率構造の見直しがあげられます。
基礎控除額の引下げ及び税率の一部引き上げ
現在の相続税 の基礎控除額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」です。これが、4割圧縮されて、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」になります。例えば、法定相続人が3人の場合には、8,000万円から4,800万円に減額されました。
相続税は、遺産が相続税の基礎控除額を超える場合に、申告が必要になります。一方、遺産が基礎控除額以下の場合には、申告は不要です。基礎控除額の引下げにより、相続税の申告が必要になるケースが倍増します。特に都内に戸建住宅(例.1平米30万円×100平米)を所有していれば、相続税がかかる可能性が高くなりました。
基礎控除額の改正
- 現行
- 5,000万円 + 1,000万円×法定相続人の数
- 改正後
- 3,000万円 + 600万円×法定相続人の数
また、現行で相続税がかかる人も増税になります。
相続税の税率は、金額が高い部分には税率も高くなるという超過累進税率を採用していますが、6億円超部分が50%から55%に、それぞれ税率が引上げられました。
改正後の相続税の速算表
実際に相続税額を計算する際には、1,000万円以下部分が10%で・・・と計算すると手間がかかるので、速算表を使って一番高い税率を乗じ控除額を控除して計算しています。例えば、2億円の場合には、2億円×40%-1,700万円=6,300万円となります
上記の改正は平成27年1月1日以後の相続から適用になります。
小規模宅地等の特例の見直し
今回の改正で相続税の基礎控除が引下げられたことから課税対象者が大幅に増える事が予想されるため、緩和措置として小規模宅地等の特例を受けることができる限度面積が大幅に拡大しました。
- 居住用宅地等の限度面積の拡充
例:
1m2 30万円×400m2=1億2千万円(自宅の評価)
1m2 30万円×80%×330m2=7,920万円(小規模宅地の特例の減額)
1億2千万円-7,920万円=4,080万円(この価額が相続税の計算に算入) - 居住用宅地と事業用宅地の完全併用(限度面積の拡充)
現行では限定的に併用が認められている居住用宅地と事業用宅地について、完全併用(貸付事業用宅地を除く)が認められることとなりました。
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※居住用宅地等または事業用宅地等で限度面積に満たなかった部分については、これまでどおり一定の調整割合で計算した適用対象面積の範囲内で貸付事業用宅地(賃貸アパート・駐車場等)の減額もうけられます。
この改正も基礎控除引下げ等による増税に合わせて、
平成27年1月1日以後の相続から適用になります。
- 被相続人が老人ホームに入居した場合、老人ホームの終身利用権を取得して空き家となっていた家屋の敷地についても特例の適用対象となりました。
- 2世帯住宅の構造上の要件の撤廃
こちらの適用要件緩和の改正のみ平成26年1月1日以後の相続から適用になります。